2009.11.24 (Tue)
第4話 〔2〕
空港へはトンネルの様な通路が続いている。
機内出入口前にはズラリと人々が並んで外に出る順番を待っていた。
その列に従って莉亜も並ぶ。しばらく待つと空港へ続く通路からフロアに出て、入国検査の場所へと進んで行く。検査が無事終わると税関を抜けてからやっと荷物のあるフロアにたどり着くのだった。
搭乗者のトランクが乗せらてグルグル回転しているレール。
早速近づいて自分の荷物を探し始める莉亜。
何度目かのレールが周回し終わった時、赤色で光沢のある見慣れたボディーにグリーンのバンドが付いたクリスマスカラーに目を奪われる。
莉亜が家を出る時に目立つようにトランクをクリスマスカラーにコーディネイトしておいたから、そのお陰で迷わず手に取る事ができるのだった。
トランクを手に莉亜がその場を去ろうとフロアから移動するも、無数の空港出入口に足が自然に止まる。予定では空港に迎えが来る手はずなのに、今だそれらしい人影が発見できず。
莉亜はどの出入口から外に出れば良いのか、さっぱりわからずさ、迷い歩き疲れた模様。もはや口からでるのはため息と泣き言。
「全然わかんないよ……出口が」
疲れた様子の莉亜へと、機内で一緒だった男性が数メートル前まで接近していた。
不適な笑みを携えた男性がクリスマスカラーのトランクを引きずるように持つ彼女に声を掛ける。
「――おい!」
「なっ何?」
(ま、またこの人なの)
嫌そうな様子の莉亜を一蹴した男性。競歩選手みたいな歩き方をしている彼女を何処からか見ていたらしく、クスッと鼻で笑うと答える。
「アンタ、後何回空港を周る気なんだ? 随分、独りで楽しそうなんだな」
「それよりっいちいち、私に突っかかってくるのやめてくれないっ!」
あえて、何か意味ありげなふくみを持つ言葉で男性に答えを要求する莉亜。
「私、貴方に何かしたかなぁ?」
「んっ――あえて言ってもいいなら言うけど……どうする?」
小バカにしたような男性の意味ありげな表情で何が言いたいのか莉亜は察知する。
「もしかして、まだ機内の事持ち出すの? だったら答えはNOっ! 結構です」
男性から離れたい莉亜はそう言い切るとそそくさとその場を後にしようと試みるが、男性に進路を阻まれた。ピクピクを表情筋をひきつらせて無理に目の前の男性に微笑みを浮かべるが、大きな黒い瞳は笑っていない様子。
「これは私に対して、なんの冗談?」
莉亜の小さな肩がわなわなと震えていた。
「いや、アンタが俺の行く方向に突っ込んできただけだろ、冗談も何も――」
「……あ」
(もうっ私また勘違い……)
赤い顔の莉亜は相変わらず無理な笑顔のまま、男性とは逆にくるりと方向転換した。
「えっと――私はこれで」
そう言った瞬間、莉亜のポケットに入れていた財布が落下して空港の床を直撃。
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機内出入口前にはズラリと人々が並んで外に出る順番を待っていた。
その列に従って莉亜も並ぶ。しばらく待つと空港へ続く通路からフロアに出て、入国検査の場所へと進んで行く。検査が無事終わると税関を抜けてからやっと荷物のあるフロアにたどり着くのだった。
搭乗者のトランクが乗せらてグルグル回転しているレール。
早速近づいて自分の荷物を探し始める莉亜。
何度目かのレールが周回し終わった時、赤色で光沢のある見慣れたボディーにグリーンのバンドが付いたクリスマスカラーに目を奪われる。
莉亜が家を出る時に目立つようにトランクをクリスマスカラーにコーディネイトしておいたから、そのお陰で迷わず手に取る事ができるのだった。
トランクを手に莉亜がその場を去ろうとフロアから移動するも、無数の空港出入口に足が自然に止まる。予定では空港に迎えが来る手はずなのに、今だそれらしい人影が発見できず。
莉亜はどの出入口から外に出れば良いのか、さっぱりわからずさ、迷い歩き疲れた模様。もはや口からでるのはため息と泣き言。
「全然わかんないよ……出口が」
疲れた様子の莉亜へと、機内で一緒だった男性が数メートル前まで接近していた。
不適な笑みを携えた男性がクリスマスカラーのトランクを引きずるように持つ彼女に声を掛ける。
「――おい!」
「なっ何?」
(ま、またこの人なの)
嫌そうな様子の莉亜を一蹴した男性。競歩選手みたいな歩き方をしている彼女を何処からか見ていたらしく、クスッと鼻で笑うと答える。
「アンタ、後何回空港を周る気なんだ? 随分、独りで楽しそうなんだな」
「それよりっいちいち、私に突っかかってくるのやめてくれないっ!」
あえて、何か意味ありげなふくみを持つ言葉で男性に答えを要求する莉亜。
「私、貴方に何かしたかなぁ?」
「んっ――あえて言ってもいいなら言うけど……どうする?」
小バカにしたような男性の意味ありげな表情で何が言いたいのか莉亜は察知する。
「もしかして、まだ機内の事持ち出すの? だったら答えはNOっ! 結構です」
男性から離れたい莉亜はそう言い切るとそそくさとその場を後にしようと試みるが、男性に進路を阻まれた。ピクピクを表情筋をひきつらせて無理に目の前の男性に微笑みを浮かべるが、大きな黒い瞳は笑っていない様子。
「これは私に対して、なんの冗談?」
莉亜の小さな肩がわなわなと震えていた。
「いや、アンタが俺の行く方向に突っ込んできただけだろ、冗談も何も――」
「……あ」
(もうっ私また勘違い……)
赤い顔の莉亜は相変わらず無理な笑顔のまま、男性とは逆にくるりと方向転換した。
「えっと――私はこれで」
そう言った瞬間、莉亜のポケットに入れていた財布が落下して空港の床を直撃。
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